メトロの中は、近過ぎです!
「姉貴は親父の子なんだ。前の奥さんとの…」
「うん…」
「姉貴も小さい頃は優しかった。本当の姉弟のように俺は可愛がってもらってた」
「うん…」
「俺が高校生の時に、本格的に大野建設と関わり出したとき、そんな話が出た」
「……」
「俺は親父も姉貴も裏切れない…」

最後の言葉を辛そうに口にした後、しばらく大野さんは何も話さなかった。
私も何も言葉にすることができない。

大丈夫だよ。私のことは気にしないで…

そう言いたかったけど、胸と喉に何かが詰まってしまって、声に出せなかった。

私が想像していた政略結婚的な話とは、重さが違っていた。
大野さんはその結婚がイヤなんだろうと、勝手に想像していたけど、全く違ったんだ。


もう薄暗くなった海を二人でただ見ていた。

あと少しで暗闇が二人を包むだろう。

昼間の美しい海から、すべてを飲み込みそうな黒い海に変化していく……

私にはどうすることもできない時間の流れ。
< 231 / 309 >

この作品をシェア

pagetop