メトロの中は、近過ぎです!
車はすぐに海沿いの駐車場に止まった。
彼はハンドルに顔を埋めている。
私も何も言わないで、ただ海を見ていた。

しばらくして、彼がゆっくりと話し始めた。

「…ここ逗子マリーナ」
「そう…」
「なんかあったらいっつもここに来てた」
「そうなんだ」

風が車を揺らしていく。

「…あの人、姉貴」
「お姉さん?」
「そう。俺の結婚相手」
「…っ…」

大野さんを見ると、落ち着いた目で私を見ていた。
何を言おうとしてるのか分からない、静かな瞳。

大野さんはシートに身体を預けてゆっくりと話し始めた。

「母さんは俺のために再婚したんだ。大野の父が俺を後継ぎにしたいって…」
「うん…」

掠れそうになりながら必死に答えた。

「大野の父にはよくしてもらったよ。大学も行かせてもらったし、将来役に立つからって他の現場や会社で修業とかもさせてもらえた」
「うん……」

聞くことすら難しい。

「だけど、周りが反対したんだ…」
「うん…」
「血の繋がってない俺に継がせることに猛反対だった」
「うん…」
「それで姉貴と結婚するならって…」
「……」

理解するのはもっと難しい。
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