メトロの中は、近過ぎです！

トライアングル

この時間の電車はまだラッシュって程じゃなく座ることができる。
ぼんやりと車内を眺めると、昨日私に何があったかなんて関係なく世の中は進んでいくんだって、孤独を感じた。
だけどあの普通に立ってるキャリアウーマンだって、本当はいろいろあるのかもしれない。
みんなそうやって電車に乗って仕事に行ってるのかもしれない。

いつもと少し違う景色の中を歩き人形町のオフィスに着くと、やっぱり誰もいなかった。

必要な書類とパソコンを素早く大きいバッグにまとめ、ホワイトボードにペンを走らせる。

『鶴見営業所　　夕方帰社』

これなら誰にも会わずに仕事ができる。

そしてまた来た道を戻る。

電車の中は最初こそ乗りづらかったけど、地上に上がる頃には逆方向のために人は段々減っていった。

対向列車のホームには、はみ出しそうなくらいたくさんの人がいる。

いつもなら私もそっち側なのに……
イヤだイヤだと思っていたラッシュの人混みも、入れないと分かると寂しくて
社会からはみだしてしまったようで、一人バッグを抱え直した。

もう元の場所に戻れないんじゃないだろうか。
そんな不安が心を薄黒く支配する。