メトロの中は、近過ぎです!
預かっていた鍵で鶴見営業所の事務所に入れた。
ホール横の長い階段を登って2階の事務所に行くと、この前来た時にはなかった長机とパイプ椅子が並んでいた。

戸田君のデスクなんだろう。

頑張っている同僚が、妬ましい。

もし私がこの場所を見つけていたら…
もし私が下田に出張しなければ…

こみ上げてくる後悔に唇を噛んで、戸田君のデスクに座った。

パソコンと資料を並べて、早速出張の報告書を作成しようとする……けど、いつものように手が動かない。

考えがまとまらない。
というか何から書いたらいいのかさえ考えられない。
何度も何度も気合を入れるけど、画面は白いまま。

身体がだるい…

しばらくして、はかどらない作業を中断して、あの日、大野さんと一緒に立った室内の窓に立って表通りを見た。

太陽は既に登り切っていて、とっくに今日が動き出している。

外の晴れた天気が眩しかった。
私には一生許されない天気のように感じた。

そんなことをぼんやり考えていたとき、誰かの気配が扉の外からした。
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