メトロの中は、近過ぎです!
カチャリと事務所の扉が開いた。
戸田君だろうと思って振り向くと、そこにいたのは

大野さん。

とっさに目をそらした。

「おはよう」

あぁ、大野さんの声だ。

泣きそうになった。
でも泣いちゃいけない。
私はもうこの人に甘えちゃいけないんだから……

「早いな。そんなに仕事したかったか?」

声の調子から笑顔で言ってるのが分かる。

「う、ん…」

喉が痛い。

「風邪か?声へんだぞ」

自分でも声が震えているのが分かる。

「うん…」

目を合わすことができない。
長机に戻って、仕事してるフリをした。
そうするしかなかった。
お願い。このまま一人にしといて。

「おい。何、怒ってんだよ」
「怒ってなんかないよ」
「じゃ、こっち向けよ」
「…忙しいの…」

近づいてくる足音がする。

来ないで

心臓がうるさく動いている。

今日は、会いたくなかった…
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