メトロの中は、近過ぎです!
「そうですね。そんな話でした」

この地下室のような無機質な空間が、森の奥の花畑に思えてきた。

「もう少しあのままだったら、してたかもね」

いたずらっ子のような瞳を見せたイケメン……いや、王子。

もう少し寝てれば良かった。

なんて思ってしまうのはしょうがない。
もう二度とこんな素敵な方と話すこともないんだろう。

……ないのかな。

「あ、あの。今度良かったらお礼させてください!」

不自然にならないように、誘ってみた。
駄目で元々、本当なら話すことすらできない人だもの。

「その気持ちだけ受け取っておくよ」

「……ですよね」

私なんかに構ってる余裕なんてないだろうな。
最初に気付くべきだった。
きっとお似合いの美しい女性がたくさんいらっしゃるんだ。
そして毎晩繰り広げられるパーティで楽しそうに笑いあって、一夜の関係とか……別世界の王子様だ。

「デートのお誘いなら大歓迎だけどね」

優しい王子は社交辞令もスマートだ。
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