メトロの中は、近過ぎです!
「ホームからここまで抱えてきたんだよ。俗に言う お姫さま抱っこって言うやつ?」

「えーーーーーっ!す、すみませんっ!」

頭から蒸気が立ってるんじゃないかってくらい熱い。
そこまで迷惑かけてたなんて……
ダイエット、しとくべきだった…

「それでこの部屋に案内されてね、ベッドに寝かせて、ずっと寝てるからさ、起きないのかも…なんて心配になってね」

優しい囁くような話し方。
この人にお願いされたら、なんでも引き受けてしまうだろうな……
なんて余計なことを考えてたら、

「キスしたら起きるかもって思ったんだよね」

「え?キスですか?」

突然の話の展開に若干ついていけてなかったけど、思わずその薄い唇を見てしまった。

「そう。なんかのお伽話であったよね?眠れる森の…いや、シンデレラだっけ?」

「それ、白雪姫じゃ……?」

その穏やかな話し方に私もつられて笑顔になっている。

「そうだっけ?」

「はい。7人の小人とかがいて、毒リンゴで…」

「あー、そうか」

額にかかった前髪をかき上げて、ニッコリ笑ったその顔に、頬が熱くなる。

「それで王子が登場して、キスで目覚めるんだよね?」

たぶん、今、私の頬は白雪姫よりピンク色だ。
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