メトロの中は、近過ぎです!
伊藤チーフの相手は辰五郎さんではなく、優さんの方だった。

全く気が付かなかった。

私が「伊藤チーフが大野課代を狙っている」
と言ったのを辰五郎さんが騒ぎ出して、チーフと優さんはケンカにまで発展したらしい。

「課代はいつから気付いてたんですか?」

一番気になることを聞いてみた。

「挨拶に行った時しかないだろ。
俺のことイケメン御曹司って知ってたからな」

当り前のように言うその態度が、なんかムカつく。

「おまえが言ってないんだったら、普通に考えて伊藤さんしかいないだろう。
この短期間に接触するなら、家族か恋人か…
あの息子を見た瞬間全部が繋がったね」

って、ものすごく得意気なんですけど、
コナン君ですか?


その日、私たちは伊藤チーフを囲む会と称して、居酒屋・白虎に来ていた。

チーフはみんなの質問攻めにあっていて、
なんだか申し訳ない気もする。

私は隅の方で小さくなっていた。

「か・だ・い~。伊藤チーフのこと知ってらしたんですか?」

沙也香ちゃんもチーフの恋愛話が嬉しかったのか、すごくテンションが高い。

「なんとなくですね」

課代も爽やか御曹司の笑顔で答えている。

はぁ~。私ってまだまだ全然周りのこと見れてないんだなぁ。


「おまえ、今日は電車で帰れよ」

お開きになると課代が冷たく言ってきた。

川端主任も来ているからだろう。

「わかってますよ」

なんだか素直に返事ができない。
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