メトロの中は、近過ぎです!
「ん~、でもそれはちょっと難しいですね。あ、難しいかな。でもタメ語で話してたら、会社でも敬語忘れそうです」

「そうか…」

そう言った大野さんは、なんだか寂しそうに見える。

御曹司って寂しいのかな?
周りは皆 敵ばかりとか?
せめて私と友達になりたいとか?

「どうぞ、おつまみも食べてくだ…おつまみも食べれば?」

「なんだその言い方は」

良かった。笑顔になった。

「これお前が作ったの?」

「そんな作ったって言えるレベルじゃないですよ」

ちょっと謙遜してみた。
大野さんが梅キュウを一つ口に入れる。
ドキドキしながらその感想を待った。

「これ…この梅干って…」

「美味しいでしょう?この梅干、母の手作りなんです」

「……」

「昔っから母は梅干漬けるのが上手で、ご近所さんにもよく配ってるんです。これが評判いいんですよ。
ちょっと市販のやつより塩が効いてるんですけどね…
あれ?ダメでした?」

「イヤ。旨い。うん。すごく旨い」

言ってる言葉よりその言い方で、大野さんの中での最上級の褒め言葉なんじゃないかと思った。
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