すみません、彼氏ください
Chapter Ⅰ

自然をテーマにしているのか、お店の中にある家具はほとんど木で出来ている。落ち着いた雰囲気の中、似合わず心の中で焦るわたしを見つめる視線が三つ。

一人は柔らかく微笑んでいてわたしの次の行動を待っているようにも思える。
一人は無愛想に顔を顰めながらその自慢できるであろう高い位置からわたしを見下ろす。
一人はちらちらとわたしと他二人を交互に見つめながら、どういう流れになるのかを傍観していた。

誰も彼も何を考えているのかわからずに、わたしは口を開けないでいる。
座ったわたしと、カウンター越しに立ち見下ろす三人。

今更帰ります、なんて言えないわたしは視線をあちこちにさ迷わせて困ったように彼らを見上げる。
それでも彼らは何かを言えと目線で訴えてくるものだから、余計に口を開くことが出来ない。

どうしてこんな状況になってしまったんだろう、と数時間前の自分を恨みながら、永遠にも続きそうな沈黙を貫き通した。
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