侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
そんな風にされたら……
「本気にしてしまいそうです」

零れ落ちた呟きは小さく、え? っと聞き返されましたが、気付かぬふりでドアに向かって少し大きな声を出しました。

「リードマン大丈夫よ、入って」

やり手の副執事は部屋に入って私を見るなり、おやまあ……と意味ありげに言って両眉を上げ、私は本能的にサッと目を逸らしました。

「ルイーズ様が奥様にお詫びとお礼を申し上げたいそうですが、旦那様とのキスが激し過ぎて立てなくなってるから無理ですって、言っときますかぁ?」

「「言わなくていいっ!!」」

執事なら、ポーカーフェイスで気付かないふりでしょー!

冷静を装って、
「わたくしも後で行くつもりでいたのよ。バーバラ様にもお礼を申し上げないと」

「ああ、それでしたらお早めに。大奥様この後、奥様のご実家へ行って、メイヤー様と飲むんだそうです。男同士の友情が芽生えたんだとか」

「男同士の友情?」

不思議そうに尋ねると、さらっと答える副執事。

「ええ、大奥様がそうおっしゃいました。色恋には発展しないお付き合いだとか。独特の感性をお持ちの方ですから理解しようとしても無理ですよ、奥様」

レイモンド様は苦笑交じりに
「くれぐれもエセルの実家に迷惑を掛けないようにと伝えてくれ」と。

そうこうするうちに私の体も元に戻り、何事も無かったかのようにルイーズ様のお部屋へ行く事が出来たのでした。
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