侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
今回父は色々な意味で高い授業料を払いましたが、必死で上流階級に喰い込もうなんてするから、いけないのです。

それまでの人生、努力と根性と才覚で思い通りに大階段を駆け上がって来たとは言え、月や星までは行け無いし、そんな所へ行く必要など全く無いのだと、早く気付くべきなのです。


考え事をしている私をよそに、目の前の二人は険悪な雰囲気ながらも話を進めているようです。私がここにいる必要なんて無さそうなのですが……。

「妹はトンずらこいて、兄貴は金が返せねぇ、これじゃぁ埒があきませんなぁ」

生粋の貴族のレイモンド様は、父の相次ぐ汚い言葉に不愉快そうに顔を背けられました。

「全額直ぐには無理だと言っただけだ!」

「ふんっ、あいにく分割ってやつが私は昔から大っ嫌いなんですよ。土地か家か別荘を売りゃ纏まった金が入るのに、先祖が名誉がとクソみたいな御託並べて話にならないし……」

「何だとっ、無礼にもほどがある!!」

「無礼? 仕方が無い、警察や裁判所に間に入ってもらいましょうや。あんたら貴族様が平民を蔑ろにしても許される時代は、とっくの昔に終わったって事を思い知ると良い。恐らく妹御は数日のうちに捕まって、最低でも十数年はブタ箱暮らしでしょうなぁ、お可哀想に」
言い終わるなり父は、楽しそうに笑い声を上げました。

「いや待ってくれ、我が家から犯罪者が出るなどあってはならない事だ。特に私の代で家名を穢すなど絶対に出来ないっ!!」

「ほぉう、そうですか」
父は三日月型に目を細め、口角を上向かせました。
後から思えば父はレイモンド様をじわりじわりと追い詰めながら、この時を待っていたのです。

「私も鬼では無い……、ではこうしましょう…………」



えええええーーーーー!!!


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