侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
僕はいてもたってもいられず、令嬢達相手に咄嗟に嘘をついた。

「大変残念なのですが、ルース伯爵に大事な用事があるので、私はこれで失礼します」

そして、エセル達の所へ急いだが、途中ルースの楽しそうな声が聞こえて来て愕然とした。

「……ホントに何でもいいんだね? じゃあ優勝したらご褒美は、セルルが欲しい!」

おいお前、今何て言った!?

「アンディー、……冗談でしょう?」

「はは、冗談じゃないんだけどな。この一ケ月間の僕のアピールは、伝わってなかったって事だね?」

一ケ月のアピールってなんだよ、そいつとは会ってたって事か!?

道理でメイヤー殿が、あっさり僕の申し入れを断ったわけだ。
あの腹黒、僕とルースを天秤にかけやがったなっ!? 

僕よりそいつの方が重かったって事かよ! 
くそっ、あああまったくなんだよっ!!

僕はルースの目の前に立ち、イライラを心の奥に封じ込めて、つとめて穏やかな笑みを浮かべた。

「これはルース伯爵、今日はお手柔らかに。……エセル嬢、久し振りだね」
 
あ、またつーんと顔を背けた……
エセル、僕がレース中に落馬したら君のせいだからな!  
しょぼん

ルースは彼女とは対照的に、柔らかな笑みを浮かべ
「ウィザーク侯爵、こちらこそお手柔らかに」
と握手してきた。

「ああそうだ、さっきノーティア伯爵が君を探していたよ。出場者が挨拶しに来るのを待っているようだったけど、君、多分未だだろう? 彼は気さくな人柄だが、そういった礼儀にはうるさい人だから、今行って一言だけ挨拶してくると良い」

こいつが優勝する事はあり得ないにしても、エセルをご褒美になんて話、これ以上させてたまるか!!

「あ、ええ、そうですね……。セルル、一言挨拶したら戻って来るから、ほんの少しだけ待ってて」
と微笑みながらウインク。

おいお前、顔近付け過ぎだ、離れろ!!

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