侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「さあそれはどうでしょう、アンディーの言葉が本当にプロポーズなら、わたくしは彼を信頼し尊敬もしていますから、真剣に悩みたいと思います。それに、最初に返事を聞く権利はアンディーにしかありませんわ」

居心地の悪い沈黙が流れました。

「あの、そろそろ戻りたいのですが……」

「まだ駄目だ……」レイモンド様は低く呟くように言ってから、
「そう言えば君は以前『貴族とは結婚出来ない』って言ってたよな? 彼は上級貴族だぞ、良いのかい?」

私の顔を横から覗き込みながら、皮肉っぽく微笑んだのです。

「そう申し上げたのは、アンディーが伯爵だと分かる前ですわよね? 彼は貴族である前に幼馴染ですわ」

詭弁だな、と事も無げにおっしゃるレイモンド様。
間髪容れず、詭弁ではありません! と語気を強めました。

「わたくし、以前持参金目当てで寄って来る貴族の御子弟達に、うんざりしていましたの」

「君の家は大金持ちだからな。しかし、金目当てばかりとは言えないんじゃないか?」

「いいえ、バッチリお金目当てでした。でもそんな事より我慢ならなかったのは、皆様例外無く私の出自や父を侮辱なさった事です。どなたも最初は隠していらっしゃるんですけれど、ふとした瞬間に、言葉の端々や表情から透けて見えて。今となっては笑い話ですけれど」
苦笑いしながら一呼吸置き、
「まあイヤイヤとは言え、父の打算の片棒を担ぐように夜会に出ていたわたくしが、人様をとやかく言える立場ではありませんけれど、とにかく色々学習して、貴族の方との結婚は、こちらから願い下げでしたの。それで夜会にも出なくなって、父には出来損ないだ親不孝だと、散々罵られましたわ」
自嘲気味に言って、またクスリと笑いました。

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