侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「何だか取り調べみたいですね? そんなプライベートな事までお話しする義務はございませんわ」

視線を合わせてくるレイモンド様から目を逸らし、さらりと突っぱねます。

「良いから答えたまえ!」

静かながらも居丈高な物言いに、驚き呆れ少しイラっとしましたが、ごねてもこの居心地の悪い時間が延びるだけです。
ええい、ならばさっさと済ませてしまえ!

「アンディーに食事に誘われた事がありましたの」

「ふ~ん、で?」

「でも弟が熱を出していて看病しなければならなかったので、お断りしたんです」

「あ~あ、僕とは挨拶も出来ないくらい忙しかったあの頃だな?」

皮肉たっぷりにおっしゃいましたが、完全スルー&先を急ぎます。

「母が五年前に亡くなってから、わたくしが弟の母親代わりですから……。そうしたら翌日、お見舞いに来てくれたんです」

レイモンド様は「お優しいことだ……」と意地悪く呟きましたが、やはり私は、聞こえませ~んという体で続けます。

「アンディーはその後も何度か我が家に来て、弟の遊び相手になってくれましたの。弟はすっかり懐いてしまって、今では本当の兄のように慕っています。それに父も、何度か家の中でアンディーと顔を合わせるうちに、彼の気取らない人柄に好感を持ったようです」

レイモンド様は鼻先で笑って、
「『将を射んと欲すればまず馬を射よ』ってやつだな。なんとも分かりやすいやり方だ……。あいつの下心に、君は本当に気付かなかったのかい?」と。

カチン! なんて失礼な……。

「侯爵様、そんな風におっしゃるのは止して下さい! アンディーにもわたくしにも失礼です」

荒らげた声に被せるように、レイモンド様は冷たい声と表情で揶揄うようにおっしゃいます。

「君の家にいる間じゅう……いやその後も、あいつの下半身は疼いて大変だっただろうな。君、恐らくキスもさせてやらなかったんだろう? 可哀想に」

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