御曹司のとろ甘な独占愛
 伯睿からは今日の午後の予定も理由も、何も聞かされていない。
 実際何に参加するのかサッパリ理解出来なかったのだが、一花は伯睿がしたことなら……と、とりあえず曖昧に頷いておいた。

 それから周囲に誰もいないことを確認すると、陳店長はキリリとした眉を下げ、口元に柔らかく微笑みを浮かべた。

「劉副社長、とっても忙しそうね。疲れた顔をしていたわ。……最近の貴女も、とっても悲しい顔してる。……不安にならないで。イチカ、彼には貴女が必要よ」

 彼女はまるで姉が弟妹のことを語るようなそぶりで、一花の腕をさする。
 一花はそんな陳店長の態度に思わず目を瞬いた。

 なぜ……、そう考えて、陳店長が伯睿の幼馴染の姉であったことを思い出す。きっと幼馴染の姉の立場として、一花が知らない伯睿を知っているのかもしれない。だからこんなにも優しくしてくれるのだろう。

 途端に潤みそうになる瞳から、水分を無くそうと努力する。今、こんな風に優しくされたら、涙を零しながら全部話してしまいそうだ。
 一花は何度も頷いて、涙を堪える。

「……はい! ……ありがとうございます!」

「世界各国の宝石商と出会えるせっかくの機会だもの! 午後の休暇、絶対に、楽しんできなさいよ!」

 陳店長は一花の両頬を手のひらで包むと、むにゅむにゅと揉むように揺らした。
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