御曹司のとろ甘な独占愛
 今は大事な時期だから、絶対に彼の負担になってはいけないのだ、と強く自分に言い聞かせた。

(……それに、もしも婚約が本当なら……。伯睿と怡菲の大切な約束を邪魔なんて、しちゃいけない)

 怡菲に言われた言葉を思い出す。

『王子様からの愛の告白のタイミングを知っているお姫様なんて、可愛くないから――私が今日ここに来たことも、アナタに会ったことも、伯睿には内緒にしてね』

(私も、彼女の様に伯睿との未来を信じていたのに……。今だって、信じ続けていたい。けど……本当にそれでいいの? 私は、二人の邪魔者かもしれないのに?)

 伯睿を信じたいという気持ちと、婚約者のいる人と付き合っているかもしれないという罪悪感が鬩ぎ合う。

 一花は悲しげな表情で、こっそりと伯睿を窺った。
 今日も彼は、お洒落なブリティッシュスタイルのスーツをきっちりと着込み、一切の淀みなく洗練された気品を漂わせている。

 けれど、その秀麗な美貌が少しだけ曇っているようにも見える。
 ……本当は酷く疲れているはずなのに。
 伯睿は一花に対して、一切そんな素振りは見せなかった。

「さあ、行きましょうか。俺のお姫様」

 翡翠をこよなく愛する王子様は、いつも変わらぬとろけるような甘い笑顔で、一花の手をとって口付けを落とした。
< 133 / 214 >

この作品をシェア

pagetop