御曹司のとろ甘な独占愛
 伯睿のテーブルには、遅れてやってきた五十代の男性が到着した。
 何となく、伯睿と雰囲気が似ている。この男性の登場に、怡菲の父親らしき人物は立ち上がると、深く頭を下げた。

 遅れてやってきた男性は、決して色よい返事も表情も浮かべずに、伯睿の隣に座った。

 あの男性と伯睿……目元がそっくりだ、と思ったところで、「あの人は伯睿のお父さんか」と納得がいった。
 この会食のメンバーは、伯睿と怡菲、そしてきっと両家の父親だ。

 怡菲と向かい合うように座っている伯睿の様子が気になって仕方ない一花は、「一花ちゃん」と慧から名前を呼ばれるまで、目の前に運ばれてきた料理に全く気がついていなかった。

「はいっ」

「僕たちの友情に、乾杯」

 強引にグラスを渡され、乾杯する。
 慧に「僕のオススメのお酒」と促されるままグラスに口をつけ、その辛さとアルコールの強さに一花は驚いた。

「……ううっ」

「あれ? 紹興酒は苦手だった?」

「初めて飲みました……」

 慧は楽しそうに笑うと、「せっかくだから全部飲んでね」と一花へ無理難題を吹っかけた。
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