御曹司のとろ甘な独占愛
「一人で帰れます! ホテルの前にタクシーも並んでいますし!」

 一花は慧を追いかけると、隣に並んで言い募った。

「じゃあ、タクシーに同乗するよ。ここは、うちの審査を通過した安全なタクシー会社しか乗り入れられないんだけど、やっぱり海外だから。日本人女性一人では、ね?」

 慧は目の前に止まったタクシーの、後部座席のドアを開ける。

「……じゃあ、まあ……お願いします」
「うん。任せて」

 二人を乗せたタクシーは、夜の帳が降りる中、伯睿の家を目指した。



 マンションのエントランスで一花の帰りを待っていた伯睿は、険しい表情で腕を組んで立っていた。
 こんな時間に、彼女が外出しているなんてことは一度もなかった。

 今までは伯睿と一緒に帰宅していたし、一緒でない時も、彼女は直接家へ帰宅している。不思議に思って連絡を入れても、全くメッセージが返ってこない。

(それが、今日に限っていないなんて。……まさか誘拐?)

 昨夜のこともある。
 一花のことが、心配でいてもたってもいられなかった。

 しかし、当て所なく探し回ってもすれ違うだけかもしれない。伯睿はエントランスで待つことにし、時々あたりを見渡した。
 とにかく、無事に帰宅した一花へ「お帰り」を言って、ギュッと抱きしめたいと思った。
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