御曹司のとろ甘な独占愛
「一花ちゃん。……ねえ、お口直しはどうかな?」

「……え?」

 慧は甘くとろけるような声色で、一花の耳元で囁く。

「ここのロイヤルスイートルームに、興味ない? ……あの御曹司を忘れるくらい――今夜は僕が、キミを可愛がってあげる」

 慧は熱く蕩けるような視線で見つめると、多くの女性を虜にしてきたような蠱惑的な表情を浮かべ、一花の腰を抱き寄せた。

 獰猛な百獣の王の双眸が、鋭く細められる。
 舐めるような視線に、一花は羞恥心で体が熱くなるのを感じた。

「……ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫です」

 きゅっと両手を握り、胸の前で弱々しく自身を守る。

 一花の拒絶に、慧は不愉快そうに眉根を寄せた。
 しかしすぐに興味をなくしたような顔で、亜麻色の髪を掻き上げる。

「つまらないな。一花ちゃんって、そういうところあるよね」

「……それは、その、すみません」

「せっかく劉伯睿に嫌がらせができる良い機会だったのに。……仕方ない、送って行くよ」

 慧はスタスタと長い足を捌いて、エントランスに向かった。
< 182 / 214 >

この作品をシェア

pagetop