御曹司のとろ甘な独占愛
 庭園や温泉とは違う西洋風な趣の応接間へ到着し、その扉を開く。室内には、一花のよく見知った女性がいた。

「わっ! 王さん!?」

「はい、王(ワン)でございます!」

 彼女はニッコリと微笑むと、いつも通り丁寧な会釈をした。応接間には、彼女が選択してきた清楚で上質な浴衣が並んでいる。

「伯睿? これはどういう……?」

「せっかく避暑に来たんですから。この屋敷に相応しい服装で過ごしてみたいな、と思いまして。祖父母もよく着物や浴衣を着ていたんです」

 そう言って、伯睿は鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌で、幾つかの浴衣を選び出した。

「一花、これなんかどうでしょう?」

 彼が手に取ったのは、白地の浴衣に可憐な朝顔の柄が浮かんでいるものだった。天色の朝顔は、一花の花簪の色合いによく似ている。

「素敵ですね! 帯はこちらなど如何でしょうか?」

 王さんは紺色の帯を浴衣に当て、「この組み合わせが美しいと思いますよ」と一花へ微笑んだ。

「わ~! 可愛いです! じゃあ、これにします!」

「では、早速お召替え致しましょう。別のお部屋をお借りしておりますので、どうぞこちらへ」

 王さんが浴衣や帯など必要なものを持ち、隣のお部屋へ向かう。
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