御曹司のとろ甘な独占愛
「それから、一花に似合いそうなものを沢山選んでおきました。これも全て下さい」

「ええええっ!? そんなにたくさん……っ!?」

 伯睿が選んだという浴衣や帯は、ここに持ち込まれていた殆どの物だった。隣に伯睿自身の浴衣や帯も、ずらりと並べられてある。下駄も色とりどりの物が揃えられていた。

「八月中はずっとここで過ごす予定ですからね。それに、色々な姿の一花を鑑賞したいですから」

 伯睿はくすりと悪戯っぽく微笑む。

「畏まりました。それでは、また何か御入用の際には、何なりとお申し付け下さいませ! すぐにお伺いに参ります」

 王さんは良い笑顔で頷くと、不要な物の撤収に取り掛かった。


 夕刻。劉家本邸から出張して来たシェフは「お懐かしい……」と脳裏に蘇る日々を二人の姿に重ね、眩しそうに目を細めた。

「四季様は、偉大なクラフツマンでした。伯睿様のお祖母様は、そんな彼に一目惚れのような運命を感じたそうですよ。絶対に彼を逃してはいけないと思ったと、そう語っておられました」

 ダイニングルームからは、伯睿の祖父・一ノ宮四季が日本へ想いを馳せた荘厳な日本庭園を臨むことができる。
 浴衣姿の伯睿と一花は、元々伯睿の祖父母の専属料理人だったという彼の昔話を聞きながら、永遠に流れる初恋の時を、感じていた。
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