御曹司のとろ甘な独占愛
 空港から出発した車は高速道路を通り、市街地を目指す。
 日本とは反対の車線の中、日本よりも近い車間距離と周囲のスピードに、一花は思わず肩に力を入れた。
 
 無言のまま、まっすぐ行先を見続けては、時折、こっそりと伯睿の横顔を窺う。あの伯睿が車を運転していると思うと、時間の経過を感じずにはいられない。

 鼻筋の通った凛々しい横顔。黒橡色の瞳は、運転に集中している。けれど、どこか嬉しそうな感情を滲ませているのを感じ取って、一花は胸のあたりがきゅうっとなった。

 とくり、とくりと心臓が高鳴って、少しずつ世界が彩りを変えていく。


 三十分が過ぎた頃、伯睿が運転する車は台北中心部にある、タワーマンションの前に到着した。

「一花は先に降りて、ロビーで待っていてください。俺は車を置いてくるので」

「はっ、はい」

 一花は慌ててそこで降りると、高くそびえ立つ、いかにも豪華ホテルのような風貌のマンションを見上げる。

(……ここ、ホテル? マンション? しゃ、社宅……じゃないよね、絶対。私には場違いな感じが……っ)
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