妄想は甘くない

そりゃあわたしも女だから、結婚に対する憧れがないと言ったら嘘になる。
漠然と頭を悩ませている内に、当日がやって来てしまった。

秋の結婚式に出席するのは初めてで、袖にレースが施された淡い紫色のドレスを新調してみた。
美容院でヘアセットを済ませて会場のホテルへ向かう。

支社に勤める同期の佐多《さた》ちゃんと一緒に受付係の説明を受けた後、他の面子と合流した。

「ほんと皆集まれるの久しぶりだよねー。元気にしてたー?」

佐多ちゃんがややふくよかな河原《かわはら》くんとはしゃいでいると、背の高い矢野《やの》くんがわたしに耳打ちするように屈んだ。

「……何か綺麗になったね、宇佐美」

彼にそんなことを言われたのは初めてで、思わず目をぱちくりさせたが、すぐにお世辞だと思い至った。

「馬子にも衣装でしょ~?」
「……いやそういうことじゃなくてさ……」

ドレスを披露するように腕を広げて笑顔を返すと、さっぱりした塩顔を若干歪めて、きまりが悪そうに頬を掻いている。
頭に疑問符を浮かべていると、チャペルへの案内が開始されたらしく、慣れないハイヒールの足を進めた。

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