妄想は甘くない

皆連れ立って教会の扉を潜ると、頭上にあしらわれた美しいステンドグラスが目に飛び込んで来て、感嘆の溜息が漏れる。
普段よりも仕草に気を配りながら、ワンピースの裾が広がらないよう押さえてゆっくりと中央付近の席へ腰を下ろした。

新婦側は日頃見掛けることのある社員が数名居るようだった。
もしかしたら新郎側にも知り合いが居るのかもしれない。
好奇心から周辺を眺め回していると、よく見知った顔を目の端に捉えた。

……どうして、此処にいるの?

心に浮かべたまま、動けずに固まってしまう。
図らずも熱視線となってしまい、感付いたのかその人が振り返った。

数秒間、目を合わせていた。
声を掛けられたらしく隣の男性に彼が向き直った時、我に返って視線を落とした。

周囲の音が、動きが、スローモーションのように遠のいて、早鐘を打っている鼓動ばかりが大きく心を揺らしている。
動揺から冷や汗をかいている頭を感じ取り、落ち着けようと瞳を閉じて静かに息を吐き出した。
しかし、整った真顔が瞼の裏に焼き付いてしまっている。


久しぶりに、大神さんと顔を合わせた。


「いよいよだ~。どんなドレスだろうねー」

左手から届いた佐多ちゃんの声に、現実に引き戻されるかのように顔を上げた。
おかげで幾らか平静を取り戻せたらしく、助かった。

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