妄想は甘くない
そんなことを巡らせながらも3ショットをカメラに収められると、続いて教会の前で集合撮影が執り行われるようだった。
「皆さんもう少し詰めて下さーい」
カメラマンの手振りに押されて勤務先の関係者が寄り集まると、大神さんとの距離も声が届く程に縮まってしまった。
「はい、オッケーでーす」
撮影が終了し次第に騒めいた空気が戻ると、女の子が大神さんに耳打ちしている様が視界を過り、胸が音を立てた。
「大神さんって、今はお付き合いしてる人いらっしゃるんですか?」
望んではいないのに耳がその質問を拾ってしまい、掌に嫌な汗が滲みそうだった。
話の内容や雰囲気から察するに、以前から親しくしている子なのだろうかと、心を不穏な感情が占拠し始める。
「……そういう人は、いない。手強いよね、女の人は」
意味深な返答に、じわじわと心音が速まり身体の中心に響いたが、まさか振り返ることは出来ず冷や汗を流すばかりだった。
「受付係の方、移動をお願いします」
被せるようにホテルスタッフのアナウンスが耳に届き、はっと顔を上げた。
すぐ隣の披露宴会場を指差す仕草をしている佐多ちゃんと目が合うと、慌てて足を踏み出す。
「私なら手強くないですよっ」
背後から届いた甲高い声に、後ろ髪引かれる思いでその場を離れた。