『 』
ドンドンドンドンドン!!
激しくドアを叩く音に目を覚ました。
「アイカ!!アイカ!!早く起きな!!」
グラシアの声だ。
眠い目を擦りながら返事をし支度をしたら降りてくると伝えすぐに着替えた。
水場に行き顔を洗って歯を磨き店に行くと
町中人が集まっていた。
「やっと来たかい!!この寝坊助!!」
とウィルが早速ジャレ付いてきたのをごめんごめんとジャレ付き返しているとグラシアが近寄ってきていきなりぎゅーっと抱きついてきた。
それを見てウィルが困ったような寂しい笑顔を見せて引いていった。
「今日でお別れでしょう?だからお見送りさね。あんたったら寂しくなるからとか言ってお別れも言わせてくれなさそうだからね。勝手に行かれる前に起こしちまったのさ。」
「グラシアさん…」
「さぁさぁ朝ごはんさねうちのごろつき料理人たちが腕によりをかけたんだ!!たァんと食べてこれからの旅のために精をつけな」
「……はい!!」
「アイカちゃん元気でね!!」
「アイカちゃんが居なくなるとグラシエの花がなくなるねぇ…」
「なんだって!!アタシがいるじゃないの!!」
「花が違げぇもんなぁ!!」
町人の笑い声が耐えなかったひとしきりみんなで笑いあったあといろんな話をして昔話やアイカが来た頃のことについての話に花が咲いた。
太陽が頂点に向かって昇る頃
アイカはウィルに近づきふたりで写真を撮ってくれと頼んだ。
そこで写真屋がウィルとアイカのふたりの写真を撮った。
「グラシアさん私そろそろ行かないと…」
「そうかい?もう行っちまうのか…寂しくなるねぇ」
「グラシアさん…私と写真を撮ってください。ふたりで。」
「アタシかい?嬉しいねぇ」
涙ぐみながらでもふたりで写真を撮り
大切に旅袋の中に入れた。
その後アイカはみんなに向けて感謝を述べた
「この3年間この街で過ごし皆さんに育てられました。足りなかった知恵や工夫を皆さんに教わり学びました。
こうして発つ日を迎えられたことが嬉しいです。お世話になりました。
このクイダードが憂いの国だなんて言うのは嘘です!!
クイダードは幸せの国です!!少なくとも私にはそう感じました!!」
いっぱいの涙を貯めて頭を下げた。
街人たちはいいんだよぉなどと照れくさそうにでも目に浮かぶ涙を拭っていた。
「アイカこれはアタシからあんたに贈り物だよ
あんたにしてやれる最後の事さ」
そう言って連れてきたのは2頭の馬だ。
「白がブランコ、黒がルースってんだ」
ごめんよー!!と牧場の兄さんが顔の前で手を合わせた。これを知ってたから売らなかったんだよ!!許してくれな!!
と叫んだ。
なぜ2頭なのかと不思議に思っているとジョンが旅支度をして出てきた。
俺も行く。と顔に書いてある。
あまり口を開くほうではないが一度決めると曲げないのがジョンだ。止めても無駄だろうと思うほかなかった。
「行っておいで。見つけるんだよアンタの想い人を。」
「はい!!行ってきます!!」
ジョンとふたりで馬にまたがり街の出口に向かって歩き出したが涙が止まらなかった。
笑って去ろうと思ったのに涙で顔がぐちゃぐちゃだった。
「思うことがあるなら言え。もうしばらく会えない」
ジョンにそう言われて馬を降りて振り返り大きな声で、
「お世話りなりましたー!」
走ってグラシアとウィルに抱きつき
お父さん、お母さんと伝えた。
自慢の娘だよ!!とグラシアが言って抱きついた。
ウィルも鼻高々と言った感じに胸を張って見せた。

そうしてジョンの元に戻り馬にまたがって
晴れやいだ気持ちで街をあとにした。
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