僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい



□□□□


━━コンコン。


部屋のドアをノックして中に入る。


ドアを開けると個室のベットで、本を読んでいる少女が1人。



「おはよう、渡未《わたみ》さん」
「おはよう、佐波《さなみ》君」


お見舞いに来た佐波琢磨《たくま》が挨拶をすると、個室の病室で本を読んでいた渡未咲来《さく》が挨拶を返す。





《高1の夏。心臓病の病状が悪化した母は夏休みに入る少し前から入院をしていました。
そして、そのお見舞いに毎日来ていた父は、毎回母から頼まれた本を買って渡していたといいます。》




「入院生活はもう慣れた?」
「小さい頃は常連だったからね。元々慣れてるよ」
「そっか。
あ、そうだ。
はい、これ。頼まれてたやつ」


手に持っていた小さな袋から1冊の本を取り出し、咲来に渡す。




「あ、ありがと。ずっと気になってたんだよね」

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