軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「わかったわ」
「それじゃあ、おやすみ」
少しおかしくてクスリと笑うと、アグニはやっぱり妹に向けるような優しい兄の面立ちで微笑み返してくれた。
周りを警戒しながら部屋を出ていくアグニを見送り、寝台を振り返る。見知らぬ男とふたりきりになったセレアの心は、少しだけ落ち着かなかった。
「顔色がよくなったみたい」
アグニに彼の濡れた服を脱がしてもらい布団で包んだせいか、心なしか頬に血色が戻った気がする。セレアは彼の眠る寝台に腰を下ろすと、掛物から出ていた無骨な手を握った。