軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「ありがとう、アグニ」


 アグニとはお互いの立場を理解していくうちに、近づきすぎれば相手を危険な目に合わせるかもしれないという不安からいつしか距離を置くようになっていた。


 離れていた間に彼が神官色に染まってしまっていたら、自分とはもう話してくれないかもしれない。そう思っていたけれど、心配性で優しい彼の本質はなにも変わっていなかった。改めて頼ってよかったなと思う。


「そろそろ俺は戻るよ。長居するときみに迷惑がかかるからな」

「気をつけて戻ってね」

「きみも、困ったら俺を頼ること。いいね?」


 扉の前で振り返ったアグニが念を押してきた。幼い頃から、彼の口癖は子供に言い聞かせるような「いいね?」だった。このやりとりも懐かしいなと、小さく微笑みながら頷く。

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