軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「そうだよ、あそこから抜け出してきたんだ」

「無事でよかった!」


(生きていてくれただけで、嬉しいわ)


 彼の前で膝をついて両手を広げると、人目もはばからずに抱きしめた。そんなセレアを困ったように微笑みながら、抱きとめてくれるアグニ。


「もう二度と会えないかもしれないって、不安だったのっ」

「きみに会いに行くって約束があったから、俺はここまでこられたんだ」


(それって、別れ際に私が言った言葉のことね)


 それが彼の命を繋いでくれていたのだとしたら、伝えてよかったと心底思った。


「もういいだろう、早く離れろ」


 近くで声が聞こえたと思った瞬間、腕を強く引かれて後ろに倒れ込む。


振り向けば、眉をしかめて露骨に不機嫌そうな顔をしたレイヴンが自分を抱きしめていることに気づく。


< 142 / 281 >

この作品をシェア

pagetop