軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「べリエス軍事司令官、そろそろ帰還の指揮をとらねばならないのでは?」

「そうですね、私は〝誰より〟忙しい身なので、皇帝陛下になど構っている暇はありません」


 癖のある上司にアグニは「やれやれ」とため息をついて、べリエスと共にその場を離れる。


「アグニが後任に足る人材になれば、すぐにでも解任してやる」


 悪態をつくレイヴンだったが、本心でないことはわかる。皇帝であろうと関係なく、意見を言ってくれる者というのは貴重だ。


セレアも聖女であったとき、誰もが無条件にかしずくことを寂しく思っていた。誰かの上の立つ者は孤独であるため、セレアにとってはアグニがいたように、ひとりの人間として向き合ってくれる存在というのは大切なはず。


 再びふたりにきりになり、嵐が過ぎ去ったかのような静けさの中、レイヴンがなにか言いたげにこちらを見てきた。


< 177 / 281 >

この作品をシェア

pagetop