軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「そのままでいいから、聞いてほしい」


 魅力的なバリトンの声に耳を澄ませて「はい」とそれだけ答えると、大切な人の一言一句を聞き逃さないように意識を集中させた。


「俺は言葉足らずだからな、伝わっているのかはわからないが……」


 迷うように間が空き、レイヴンが深く息をつく。


 なにを言われるのかが気になって、早く先が聞きたい気持ちになった。それでも急かさなかったのは、彼が聞いてほしいと言ったから。


言葉少ない彼がわざわざ伝えることを宣言したのは、隠したい心の内を話す決意をしたためだろう。


(なら私は、レイヴンの言葉をどれほどの時間がかかっても待とう)


 そんな湯水のような温かい気持ちがあふれてきて、さらに彼へ身を寄せた。


< 178 / 281 >

この作品をシェア

pagetop