軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「もっと心を枯らしていただかなければ。なにも感じず、私の言葉だけに従うように」


 そう、平然とこの人は人を人とも思わない発言をする。慈しみの心を忘れるなという信仰とは真逆の言葉を吐く彼が一番、神など信じてはいないのではないか。


 そう思ったのは彼が神ではなく〝私〟の言葉に従えと言ったからだ。


(まるで、自分が神とでも言いたげだわ)


 楽園に続く神殿の長い回廊を歩きながら、今日の礼拝もセレアを贄に民の心を惹こうとする催眠術と同じじゃないかと大神官の背に軽蔑の眼差しをぶつける。


「聖女様、お勤めを果たされますように」

「わかっています」


 獅子の細密なレリーフが荘厳さを感じさせる両開きの扉の前にやってきたセレアは、抑揚のない声で答えた。

フェンリルはたいして気にした様子もなく、スッと片手を上げて扉脇に立つふたりの神官に扉を開けるよう指示を出す。

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