軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「そんなに、見ないで」


 今にも消え入りそうなほど、掠れた声が出た。


 なのにレイヴンときたら、どぎまぎしているセレアなどお構いなしに、容赦なく挑戦的な目を向けてくる。


 恨みがましく睨むと、痛くも痒くもないと言いたげにフッと笑った。


「そのように泣きそうな顔で睨まれても、逆効果だぞ」


 むしろ煽られたと言わんばかりに、彼の顔が傾きながら近づいた。


触れる直前で、お互いの唇の隙間を縫うように「セレアが欲しくてたまらない」と囁かれる。恥ずかしさと喜びに、もう泣きそうだった。


 そんなセレアに気づいてか、慰めるように唇を彼のもので挟まれる。それは息が詰まるほど優しく、甘やかな痺れで心も体も支配した。


 離れる間際まで堪能するように、ゆっくりと唇を離すレイヴン。もう終わりかと、あれだけ恥じらっていたのに大胆なことを思ってしまった。

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