軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 自分の中にこのような残酷な感情があることを初めて知った。


「あなたがこの神殿を出て行ったと聞いたときは、殺してしまいたいほど憤慨しましたよ」


 相変わらず下卑た笑みを張りつけて、ゆっくりとこちらに歩いてくる大神官フェンリル。


(嫌、来ないで……)


 距離が近づくたびに、恐怖で体が鉛のように重くなる。


「秘密裏に送り込んだ神官からの知らせでは、純潔を捨てたとお聞きしましたが」

「っ……だとしたら、どうするというのですか」


(いっそ、それで聖女の資格はないと私を諦めてくれないかしら)


 そんな期待を抱きながら、目の前にやってきたフェンリルを睨みつける。彼はこちらを冷たい目で見下ろして、無遠慮にセレアの髪を掴んだ。


< 239 / 281 >

この作品をシェア

pagetop