軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
◇エピローグ◇

永遠の純潔



 ヴォルテール夫妻がイザナギ帝国に帰還したのは、妻であるセレアが攫われてから十五日後のことだった。


 時間がかかったのにはわけがある。実質的な統治者であった大神官が失脚したカエトロ―グ島は、国としての機能を失ってしまっていた。


長年鎖国していたこともあり、面倒を見てくれる同盟国もいないため、新しい大神官を立てて再統治する必要があったのだ。


 そこで白羽の矢が立ったのはアグニだった。昔から頭の切れる幼馴染だったので、彼の優しさも加えて大神官にはぴったりの逸材だと満場一致だった。


「離れるのは寂しいけれど、この地からきみの幸せを願っているよ」


 大神官になる意思を固めたアグニから、別れ際にそんな言葉をもらったのを覚えている。


最初に彼とカエトロ―グ島で別れたときは、危険の中へ残していく罪悪感に苦しい思いをした。けれど、今回は違う。


お互いが明るい未来のためにそれぞれの道を歩むので、満面の笑みを浮かべてお別れをすることができた。


< 274 / 281 >

この作品をシェア

pagetop