軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「どうしたらいいの?」
悩んでいると、この島で唯一信頼できる男の姿が頭を過った。
「そうだわ、アグニなら……」
アグニは自分より二つ年上である二十六歳の幼馴染。十六歳のときに聖女に選ばれた際、親元から離されて神殿に囚われるセレアを追いかけて、神儀官になってくれた兄のような存在だった。
この神殿では神殿の長である大神官の下に、政治的な影響力をもつ神儀官という役職がある。アグニは神殿に属する聖職者の中では最下層の小務官から見習いとして修行に励み、才能を買われてわずか三年で今の地位に上り詰めた。
彼を頼ること以外に良策が浮かばなかったセレアは、巻き込むことに胸を痛めつつ、アグニの力を借りて人目をはばかり男を自室に運ぶのだった。