軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う




「アグニ、ありがとう」


 自室に帰ってくると、ふたつ返事で協力してくれた幼馴染に深々と頭を下げる。


 天井や壁、床に至るまで白で統一されたこの空間には、少し赤みがかったウォルナット材の飾棚や洋服タンス、ナイトテーブルなどの高級感ある調度品がそろえられていた。


「いや、それはいいけど……」


 途切れた言葉の代わりに、彼は心配そうな顔でこちらを見る。アグニはダークブラウンの髪にトパーズの活発さを宿す瞳をもち、首元から足先まで隠された白の長衣を着ていた。


 神殿では男女問わずに、神の前を除いて肌を見せることを禁じられている。聖女に関しては神殿内を歩くときもベールをかぶり、大神官以外の神官にすら顔を晒すことができないのだ。


 聖職者の中でも上位階級である神儀官のアグニですら、本来であれば言葉を交わすことはもちろん、部屋に入れることなんてとんでもないことだった。


 
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