軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「きみは聖女になって時を重ねていくうちに、どんどん笑わなくなった。それでいつの間にか、部屋に来ても俺の前でさえベールを脱がなくなっただろう?」
(それは、確かにそうかもしれない)
奪われた今までの生活、家族、幼馴染への未完成の恋心。すべてがもう二度とこの手に戻ってこないのだと思うと、絶望感に堪え切れなかった。
感情があるから期待して、馬鹿みたいな夢を抱いてしまう。だからこそ心を閉ざそうとして、次第に表情も消えて言ったのだろう。
「あなたとこうして話をするも、久しぶりだわ」
いつまでも昔のように、なにも知らないままでいられない悲しさが、心の葉を散らす一陣の木枯らしのように吹き抜けていく。