軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「ここに来た当初は、お互い子供だったからね。隠れて話したりしていたけれど……」
「お互いのために離れていた方がいいって、気づいちゃったのよね」
この神殿の大神官様は、掟を破れば容赦なく厳罰を下す。お互いが大切だからこそ、守るために自然と距離を置いていたのだ。
「でも俺は、きみとたわいもない話しができたことが嬉しい」
「私もよ。昔に戻ったみたいだった」
顔を見合わせて、ふたりで笑い合う。
また、こんな穏やかな時間をアグニと過ごせたらいい。そんなふうに願いながら、本を借りてすぐに戻るつもりだったセレアは思い出話に花を咲かせてしまうのだった。
その夜、セレアはアカンサスのレリーフが施された三面鏡のドレッシングテーブルの前に腰かけて、長い銀髪を櫛で梳かしていた。
眠気にぼんやりとする頭でノロノロと櫛を引き出しに戻したところで、ふと背中に視線を感じた。
振り返ると、アグニの歴史書を手に、こちらをじっと見つめるレイヴンと目が合う。