軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「女に興味はなかったが……お前をみすみす神にやるくらいなら、俺が奪いたいと思った」

「えっ」


(奪いたいって、どういう意味?)


 問うように月光に照らされたレイヴンの瞳を見つめる。その奥にほのかな熱が灯ったように見えて、心臓が破裂しそうなほど高鳴る。


「それだけじゃ不満か」


 彼のポーカーフェイスが、溶けるようにほぐれていく。宝物に触れるかのように、冷たい指先がセレアの白い頬を撫でた。


(不満ではないけど、戸惑うわ)


 胸の中に生まれた淡い熱がなんなのか、確かめたくてしかたない衝動に駆られる。


 見たことのない表情、初めて重なった唇、温かくも女性のものとはあきらかに違う骨ばった指。彼から与えられるものすべてに、ときめいてしまう理由が知りたい。

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