軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「あなたに触れたら、わかるのでしょうか」


 ほとんど無意識にレイヴンの頬に触れていた。一瞬目を見張った彼だったが、振り払う素振りもなく静かに受け止めてくれていた。


 出会ったばかりの頃は手負いの獅子のように警戒心丸出しだったのに、今は心許してくれているのだと思うと嬉しくなる。


 しばらくふたりで体温を分け合っていると、部屋の扉を荒々しく叩かれる。弾かれるように体を離したセレアは、途端に恥ずかしくなって勢いよく立ち上がった。


「ど、どなたですか?」

「俺だ、アグニだよ」


(アグニ? こんな夜にどうしたのかしら)


 彼の声は、心なしか切羽詰まっているようにも聞こえた。


 急いで扉を開けると、滑り込むようにしてアグニが部屋に入ってきた。

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