軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「名前はレイヴンだったか。きみの剣が砂浜で発見されたと民や神官たちが騒いでいる」
レイヴンを咎めるように睨んだアグニに、やんわりと体を引き寄せられる。驚いて顔を上げれば、いつも穏やかな彼の表情に静かな怒りが満ちているのがわかった。
「大神官様の耳にも届いていることだろう。これ以上、きみを匿えない」
「そうか」
アグニの言葉にレイヴンは表情ひとつ動かさず、立ち上がる。ハラハラしながらふたりのやり取りを見守っていたセレアは、おもむろに手を伸ばしてきたレイヴンに腕を掴まれた。
「ちょうどいい、今日か明日にはここから出る予定だった」
「レイヴン!?」
アグニから奪うように強く腕を引き寄せられる。気つけば彼の顔がすぐ真上に見えて、トクンッと心臓が跳ねた。