鬼の生き様
得物は竹刀である。
竹同士がぶつかりあい、会場は竹刀といえど防具をつけていない為、負傷者の血と全員の汗の臭いが混じり、奇妙な臭気を醸し出しているのだが、誰一人として、そんなのは気にならないぐらい白熱している。
紅組が優勢に思えたが、松五郎と総司は強かった。
次第に紅組の者達はやられていき、総司と山南の一騎打ちが始まった。
「総司!やっちまえ!」
歳三の声が二人に届くと、山南は「君はどっちの味方だ」と少し笑いながら声をかけた。
「わぁ、もう始まっちゃったんですね。
遅れてすみませんが、こちらは伊東先生より預かってまいりました」
藤堂平助は酒を手に持ち、陣中見舞いとして本陣へとやってきた。
「藤堂くんじゃないですか!
わざわざありがとうございます。
今、沖田と山南くんの試合が始まっているところです」
勇は平助にそう言うと、二人の試合をジィッと見ていた。
総司は山南が初めて試衛館の門を叩いた時に負けている。
「さぁ、山南さん。
あの日の借りを返させて頂きますよ」
二人の空気は異様であった。
竹刀を交え、二人は間合いを詰めあった。
「えぇい!」
総司は突きをついた。
確実に山南は竹刀を交わしたと思ったが、その刹那二箇所に痛みが生まれた。
(なんだ今のは)
目に見えないほど素早い三度の突きに呆気にとられているうちに、山南の土器は総司の面によって割られた。
総司はニコリと可愛らしい表情を浮かべて、頭をぺこりと下げ歳三に向かっていく。
歳三も山南がやられた姿を見て呆然と見ていた。
確かに総司の突きは以前より上手かったが、さらに磨きをかけ、たった一度しか見えない速さで突きを三段繰り返したのである。
「大将の命もらったァ!」
歳三は二人の試合に集中しすぎた。
いつのまにやら松五郎は萩原糺のすぐ近くにいて土器を割ったのである。
一試合目は白組の勝利となった。