鬼の生き様

 八木家で執り行われるセイの葬儀を是が非でも手伝いたい、そう嗚咽しながら蚊の鳴くような声で芹沢は言った。

「日頃お世話になっている八木家の皆さんの為にも、やらさせて頂きましょう」

かたじけない、芹沢はそういうと勇の手を握りおいおいと泣いた。
思わずその芹沢のすすり泣きに、左之助は涙ぐんでいた。
勇は同室に居た試衛館一派の面々に向かい、

「八木源之丞さんの御息女が残念ながら亡くなった。出来ることは少ないかもしれないが、日頃お世話になっている八木家の皆さんの為に、葬儀のお手伝いを誠心誠意心を込めて行い、陰ながら、おセイちゃんの旅立ちを見送ってやろうではないか」

と言うと、誰も異論は無く静かに頷いた。

歳三と源三郎は所用で、井上松五郎のもとを訪れていて不在である。

 水戸一派の人間もその日は、いつにまして働いていた。
雑巾掛けやハタキなどの掃除を行い、八木邸はみるみる綺麗になっていく。
壬生村での豪農であり壬生狂言筆頭宗家でもある八木源之丞の娘の葬儀だ。
参列者も多いに違いない。

「ワシは帳場をやる。やらせてくれ」

そう願い出たのは芹沢であった。
本当は葬儀で共に念仏を唱えたかったが、これは芹沢の意地でもあった。
武士たるもの、いかなんたる時も涙は見せてはならない。
これは芹沢にとっての美学でもあったが、セイが息を引き取った時に思わず声を上げて泣いてしまった。
参列すればまた泣いてしまうだろう。


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