鬼の生き様


 芹沢の懐刀、新見錦というのは学がある男だ。

膨れ上がる近藤派の人間達を畏怖して芹沢に声をかけた。

「このままでは我等の壬生浪士組。
近藤達のモノになってしまいますぞ」

芹沢は大坂へ来たというにも関わらず、朝から酒を飲んでは市中見回りもしなかった。

「なぁに、新見よ。
隊士がいくら集まろうと、百姓が築いてきたモノを武士が取り上げるというのは世の常であるぞ。
ワシらは筆頭局長と局長だ。
そんな事でたじろいでどうする」

芹沢はそう言うが、新見からしたら(土方歳三だけは侮れん)という気持ちが強かった。

「なんならお前らも隊士募集の徴募に行けばいいだろう」

芹沢は新見を見兼ねて平山達に命じたが、どうも細かい事は苦手だ。
歳三達のようにしらみつぶしに道場を周り、隊士を徴募するという地道な作業というのは性に合わない。

「芹沢さんの言う通り、隊士は奴等に任せよう。
俺達には華があるのさ。
近藤や土方みたいに土の匂いがしない。
その為には金が必要だ金だ」

新見は妙案を思いつき、商家へ行っては小金をせびるというの悪業を繰り返していた。
その資金集めというのも、恐喝まがいのゆすりで、天誅と称し商家から強請りをする過激浪士と何も変わらなかった。

「あん野郎、俺達はヒィヒィ言いながら、食い繫いでるってえのに」

左之助は芹沢達の金回りの良さを憎く思っていた。

「ほっとけ」

歳三は左之助にそう言うと、山南は「らしくない」と言った。

金の事は芹沢達に任せればいい。
そのやり方で、いつか自分の首を締めるのは芹沢達本人である。
あまりに芹沢達の横暴が酷くなった時には、勇が望まなくても上から命がくるだろう。


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