鬼の生き様
しずしずと進む葬儀の列。
その中に永倉新八はひそかに思うところがあった。
あの夜。
永倉は島原の角屋で飲み続け、そのまま泊まっていったのだが、芹沢が立ち去った後、歳三と山南が目配せをしていた事に気がついていた。
その後すぐに、歳三は山南、総司、そして左之助を引きつれて、角屋を慌ただしく立ち去っていったのは、あまりにも不自然に感じていた。
芹沢が斬られたと報告を受けて、動転しその時は気付かなかったが、いざ時間が経ち思い返してみると怪しい。
(まさか、だよなァ…)
疑惑が頭の中に暗雲みたいに広がっていくが、勇が読み上げた弔辞。
あれは紛れもなく芹沢の死を悔やんでいた。
葬儀も無事に終わり、隊士達は屯所の庭先に集められた。
新見錦、芹沢鴨が死んだことによって局長は近藤勇一人となった。
「会津中将、松平容保様により新しい名前を頂戴した。
我等は本日より『新選組』と名を改める!
これからも尽忠報国の忠義により天子様と公方様の御為に尽くして頂きたい。
それが、芹沢筆頭局長の御霊への何よりの供養である」
背の高い島田魁が檜の看板に
『會津中将御預り 新選組 屯所』
と大きく書かれた板を天高く掲げた。
───新選組。
隊士一同は、おぉ!と歓喜に満ちたどよめきが起こった。
新選組誕生の瞬間である。
これから彼らは益々の激動の世の中を駆け抜けていく事となる。
芹沢鴨の想いを胸に抱き、誠の旗の下に集いし武士達よ、永遠に。
第一部『鬼の生き様』 完