鬼の生き様


 一尺三寸(約39cm)ほどの薪でも、門人達は惣次郎に次々と打ち込まれていく。
子供扱いされるのは惣次郎にとって一番、嫌であり禁句でもあった。

それを陰で言われていたとなるとどうにもならない重苦しい不快感を感じ無性に腹が立つ。

 騒動に気が付いた源三郎は、慌てて歳三と勝太を呼びに行き、三人は慌てて出ていった。


「何をしているんだ!」


 普段怒らない勝太が憤怒の雄叫びをあげると、周囲は水を打ったように静まり返った。


「私、試衛館やめます!」


 惣次郎は唇を噛み締めながら、勝太にそう言うと門外へと走って出ていった。
勝太が門人達に事情を聴き始めると、歳三は惣次郎を追った。

 悔しくて身体が小刻みに震えている惣次郎は、涙を流すのを必死に堪えて早歩きで歩いていった。
牛込濠につくと惣次郎はどさりと座り、石を投げつけた。
水面にぽちゃんと落ちると、静けさがますます孤独へといざなわれる。

「私がいると若先生にも、道場にも迷惑をかけてしまうんだ」

ぼそりと呟いた。

木々を見れば、桜が芽をつけようとしていた。

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