それもまた一つの選択
「えー、全然知らなかったなぁ…」

こーちゃんが泣いたり愚図っても大丈夫なファミレスに入ると席に着くなり平野さんは隣に座ったそーちゃんこと、門真 総一さんの腕を突いた。

半袖から見える腕の筋肉が綺麗で思わず見つめてしまった。

「俺達の披露宴に藤野君も招待したんだけど、子供が生まれる前後なんで、と辞退されて。
幸平君が無事に産まれた事も知っていたけど、真由は悪阻で大変だったから言わなかったんだ」

トキさんもきっと。
私が慣れない生活で戸惑っている事をわかってたから言わなかったんだろうね。

「じゃあ…妊娠してたのって高校卒業前?」

興奮気味に聞いてくる平野さん。
面白い!
鼻、広がってるよ!!

「うん、夏」

「えー!」

他のお客さんが一斉にこっちを見つめる。
腕の中で寝ていたこーちゃんが一瞬ビクッとしてふにゃふにゃ言っているけど、起きなかった。

「あー!だからかー!」

平野さんの目が大きく見開いた。

「体調不良だったのは妊娠してたからなんだ〜」

私は大きく頷いた。
その通り!

「婚約したのは知ってたけど、まさかの展開〜」

でも、良かった!

そう平野さんは呟いてくれた。

良かった、と言ってくれる人がいて良かった。
どこか後ろめたい気持ちはあったから。

「で、平野さん」

今度は私が質問。

「柏原君が亡くなってまだ半年くらいなんだけど、一体どういう事?」

訳がわかりません、本当に。
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